水今novels

ちびブログです

月祖伯

だめだ これじゃ初日から遅刻

1番線の列車をやり過ごして 薄汚れた階段駆け上って 

細かな穴が空いてるプラスチックの窓越しに尋ねた

「青梅高校は何行き乗ったらいんですか」

長方形の眼鏡をかけた中年の駅員さん 

「どこの」つっけんどんに言う「高校青梅に3つある」

「あ、東青梅から歩いて10分くらいの……」

なんてこった これから通う高校の名前さえ忘れてるとは

駅員は吐き捨てるように言う「1番線」そして顔をそむけた

そういや「カザフスタン」と表示された列車がさっき停車してたっけ 

じゃあ あれで良かったのか そうか

うっとおしい西洋的自我がすくすく生長してるぼくに

友だちは1人もできない どころか邪険にされるだろう

でもそのことをすでにわかってるだけまだマシだよな

少なくとも今 誰も彼もおんなじ素材でできてるって知ってる

さっきのウツな駅員だってそうだ……思いながら階段を下りる

つるんとしたサテンが太ももを撫でる

右ポケットのコーヒー豆がビー玉みたいに階段に散らばり落ちる

1番線に「月祖伯」と表示された列車が到着した

錆色のトンネルの中 灰色の列車は灰色の空の下をがたぴしごとごと……

青梅高校の新旧生徒たちを乗せて 

まったく気が重くなるやね

豆ひと粒かじっとくか