水今novels

ちびブログです

ああ、やだ!

あの人の光 その眩さ

あの人の熱 その赤み

目の前のあなたの不規則な呼吸さえ

信じることができないままに

こうして己は消えてゆくのか

ねじくれた恐怖心とともに…

ああ、やだ!やだ!

泣きもせず 愛も抱かず 夢も見ず

漆黒の天井をただ見つめている

この瞳を8億光年が見返しているなんて

信じられない 信じたくもない

君は漁師

行為の結果に執着するな

死は必定である

生は必定である

世は現象である

君は相当ハード・ボイルドな魂である

君の服を目にした人はすぐに了解する

大きな魚しか見ていないから小さな魚には目もくれないその心を

でも守銭奴心じゃない むしろ逆

守銭奴は大きな魚を買わない(小さな魚は買うかもしれない)

君はあの魚しか目に入れない

でも釣れなければ釣れないで

それでもかまわないと思ってる

針を垂らし ぎゅっと集中して待つこと 君の人生における保留信

そんな君にちょっかいを出すつもりはまるでなかったけど

ぼくは君が苦手な小魚をたっぷり持ってて

でも この心には川が流れてないわけじゃなくて

ここだけの川が流れてるんだよ

卵型のシェルターから君に向かって叫んでも

君はまっすぐに顔をあげて ナンヨウマンタを釣り上げる

春雨

明りを消した浴室で風呂に浸かっていた

よく知っている かの女がドアを開けた

こんなこともありかも

電光パネルの光が姿態を青黒く染めていた

肩までの黒い髪は内側に向かってぴょんと跳ねていた

ぼくは両膝を抱えた 水面がちゃぴん……音を立てた

「もう上がるとこだから」震える声で言った

かの女は困ったような顔を無理に笑わせた 

「戻ってなよ」ぼくは奇妙な声で言った

静かにドアが閉まった ぽったりした身体が曇りガラスに映った

 

かの女は窓のない部屋で待つだろう 紺色のバスタオルを巻いて

どんな言葉も持たず ひたむきな顔で

目に見えないものたちの願いを果たすために 硬いベッドに腰かけて

 

ぬるくなった湯に頭まで沈めてみる

生まれる前はきっとこんな感じだったはず

冷たい春の雨が音を立てずに降り続いている

この小さな窓の外で