水と今

かくして君は待つ、ある人が現れるのを。君の命をとめどなく膨らませにやって来るのを。(リルケ)

『ムーンライト』を観た

レイトショーで『ムーンライト』(バリー・ジェンキンス監督)を観てきた。

観賞後、感想を誰かに話したりせず、胸の内に静かに留めておきたいような類いの映画がまれにある。素敵な作品だし、少なからず心打たれたし、多くの人に観てほしいと思う。でも、それについて何も言いたくない気持ちは、少しずつ確かなものになっていく。やがて心に硬い錠が下りる。その映画のことを誰かと語らう機会は(おそらく)ない。

この作品がアカデミー賞を受賞したことの意義や、俳優や音楽の素晴らしさ、印象的なシーンなど、語ろうと思えば語れるだろう。でも、声高に誉めそやしたりできない。「絶対観たほうがいいよ」なんて絶対言えない。誰かに感想を訊かれても、「うん、よかったよね。」くらいしか言えそうもない。そういう映画だった。