水と今

かくして君は待つ、ある人が現れるのを。君の命をとめどなく膨らませにやって来るのを。(リルケ)

押し入れ部屋から〜From my closet to you〜(6)

私事で恐縮だが、この日(9/11)の23時頃から床に着く刻の直前まで記されたはずの、たぶん約1000字程度の文書が、例によって私の過失により、一瞬にして雲散霧消してしまった。

先日、PCに保管していた10年ぶんの写真をひといきに消滅させてしまった時ほどの衝撃ではなかったが、やっぱりそれなりにショックを受け、おそらくはすぐにふて寝してしまったのだろう。それで1日空いてしまったわけだが、この「押し入れブログ(仮称)」は連日記すことが肝要に思われるので、翌日(すなわち今)、後追い的に記しているという次第。

 

だけど、ちょっとでも思い出してみよう。

 

喫茶仕事の疲労と酔いと睡眠不足(この日は何やかやで3時間半しか眠っていなかった)により、フラフラ状態の中、押し入れの中に入り、何やらシリメツレツなことを、でも、その時の自分なりに、かなり重要に思えることを記した(つもりだった)。たぶん、普段よりも長い時間(2時間くらい)はかけたと思う。しかし、失った刹那、自分が何を記したのかを一切合切忘れてしまった。とにかく深いため息をついて倒れこむように眠ったように思う。

だけど今、記したセンテンスをちょっとだけ思い出した。それは、たしかこんな一文であった。

この押し入れの中は漆黒の闇である。漆黒というのが言い過ぎなら、「まだら」の闇である。だからこの記述の冒頭に、押し入れとも闇とも無関係な、明るい外界の写真を貼ったり、押し入れと無関係な記述など全然まったく要らぬ気がする。押し入れの中では、押し入れのことと内と外の闇のことだけ書いていればそれで良いだろう。暗闇の写真を毎回貼るのはありだが。

(今の私はこのようには全く思っていないが、この日、自分が抱いた気持ちを尊重して、この日の記述には写真を貼らないことにする。)

 

余談だが、翌日(すなわち今日)、押し入れの中に入ってみると、床に未開封の赤ワインの瓶が転がっていた。割れていなくて幸いだった。暗闇の中でワインを飲みながらこれを記そうとしたのだろうか。きっとそうだ。だが、ワイングラスを置くスペースはこの押し入れの中にはないから、きっとラッパ飲みで(瓶は床に置いて)飲もうとしたのだろう。しかし、書き始めたら飲むことも忘れて一気呵成に記事を書き上げて、次の瞬間、何かしら致命的なキーだかマウスだかをクリックしてしまい、結果、この日の押し入れ日誌は灰燼に帰した。

 

ちなみに今は全く酔っていないから(ギネス1杯しか飲んでいない)、この記事が灰燼に帰すことは多分ないだろう。しかし、失われた記事に思いを馳せると、いささか残念な気持ちになる。

 

それは午前3時頃、広くて暗くて人の少ない居酒屋(私のイメージでは『笑笑』だ)で知り合ったばかりの友人とサシで飲んでいる時、或る瞬間、相手と奇跡的なまでの波動の一致で話が噛み合い、盛り上がり、その話が何かとても重要な地点に行きかけたところで、彼(あるいは彼女)が「ごめん、すぐ戻るわ」などと言って、やおらトイレに駆けこんだまま戻って来ないので、私も千鳥足でおそるおそる確認しに行ってみると、彼(あるいは彼女)が洗面台の前の床でのびていた時の無念さと虚しさに似ていないこともない。その後、朝のマクドナルドに彼(あるいは彼女)を連れていき、ともに酔いざましのコーヒーなど飲んでみても、もう、その時の話をすることは絶対かなわない……また明日だね。