水と今

かくして君は待つ、ある人が現れるのを。君の命をとめどなく膨らませにやって来るのを。(リルケ)

拝啓

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ご無沙汰しています。お元気でしょうか。

ぶしつけですが、夏は時間の感覚がしょっちゅうわかんなくなります。ね。

最後にここに記したのは3日前だったか、それとも1ヶ月くらい経っているのか……。過ぎたはずの時間が見境なくひゅんひゅん入れ替わったり、余暇を楽しみに先を急ぐ旅人たちの手押しカートのようにがらがら音を立てて運ばれていくようです。足にこつんこつんぶつかりながら。

時間もだけど、今、これを書いている理由というか動機もなんだかアイマイモコとしています。

あるいは記すべきことなど最初っからないのかも。だけどそんなこと言ったら、ここには記すべきことなど、もともと何もありませんから……。なんとなくってやつ。そうだっけ。
いや、違った。そうだ、思い出した。もうじきこのブログ再開から1周年(だいたい)を迎えるので、その前に何かしら前口上を記しておこうと思ったのです。それが理由のひとつでした。たぶん他にもあるのですが。

 

ともあれ、お変わりありませんか? もしお変わりあっても元気で気持ちよく過ごしているならそれで善き哉。

 

遠い場所にいる、あなたのことをしょっちゅう思っています。毎日ではありませんが思っています。いや、毎日かもしれない。どうだろ。わかんない。あんまりたくさん思いすぎていると、思っているのか、完全に忘却してしまっているのかわからなくなってしまいます。
遠い場所にいる人の存在ってば、ただでさえ現実の色みが薄いのに、合図みたいのを送りあっていないと、たとえSNSやらLINEやらで繋がっていても、あなたは真実この地球上にいるんだろうか?というような、儚いような、とりとめもない気持ちになります。でも、とにかく私は「ここ」にいますよ。I'm here. それに間違いはありゃしない。ここで手に取れるくらい具体的なコーヒーやお酒をちびちびと呑んでいます、今。

 

失礼、ちょっとお酒を取ってきます。

 

戻りました。具体的な話をさせて頂くと、私はここ数ヶ月、決めなくてはならないこと、ややこしいこと、処理しなくてはならないことが多々ありまして、なかなかあなたにお便りを書けるような状態ではありませんでした。
ごめんなさい、やっぱり書いたそばから取り消します。だってそんなこと言ったら、「書けるような状態」なんていつだってほとんどないのですから。

大人になると、時間を自分でどうにか捻出しなくてはなりません。さもないと、私の場合は無明の世界にどんどんどんどん落ち込んでいくような気がします。

混みあったドトールに滑りこんで、落ち着かない席を見つけて、耳栓代わりにイヤフォンをつけて、藁半紙みたいな色をした便せんを取り出し、青い水性ボールペンの滲む字でかりかりと書きつけなくては。たとえ書くことがろくすっぽ思いつかなくても、あるいはまだ伏せておきたいことばかりでも、

「今、ドトールでブレンドコーヒーMサイズを飲みながらこれを書いてて、朝から何も食べていないからけっこうお腹空いてて、チーズトーストを頼んだら、ちょっとお時間かかるのでお席でお待ちくださいって言われて、でも、ドトールの店員さんは出来上がってもお皿を持ってきてくれなくて、大声で「チーズトーストご注文のお客様ぁ!」って大声で叫ぶんだけど、今、耳栓しながらちょっと落ち着かない気分で呼ばれるのを待っていて……、あ、呼ばれたっぽい。ちょっと取ってきます……取ってきました。トーストがすでに冷めててちょっとがっかり。オリーブが2個ついてます。3個じゃなかったか。あなたは今日、何を食べましたか?」

とかなんとか、そんな他愛のないことで良き哉。

 

そういうわけで、チーズトースト食べ終えたし、またしばらくつたない文字で詰まらぬことをつらつら記してみるつもりです。

だから今一度、ご覚悟あれ。

そう言われて困った顔を浮かべているあなたの顔が見得た。気がした。でも、きっと実際は違って、あなたは微笑んでいるかもしれない。あるいは北京動物園の猿のように無表情かもしれない。読まずにびりびり破り捨てたかもしれない。私にはあなたの顔も姿も動きも見えません。無論、心も。私は見えないあなたに向けてただ、日々したためるだけ。どっちみに私にはそれしかできないのです。私が望むのは、とにかくこの便りが宛先不明で送り返されてこないこと。それだけ。

 

長々と(いや、たいして長くもないか)失礼しました。
今日は久しぶりなので調子に乗って最後にもうちょっと望みます。

あなたの気持ちが澄んだ陽の光を浴びた緑色のエメラルドみたいにきらきら光彩を帯びて輝いて、やがて夜になってあたりが真っ暗闇になっても、あなたの心を(少なくともあなたが眠るまで)しっかりくっきり灯していますように。望みます。それだけ。

でわでわ、また!

Itsuki.H