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水と今

かくして君は待つ、ある人が現れるのを。君の命をとめどなく膨らませにやって来るのを。(リルケ)

『夜月草』二夜め

 

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先日の水曜日、『夜の名曲喫茶』を開けました。

夜営業は先月に続く2回目の試みです。その名称は『夜月草』あるいは『月草〜night interlude (間奏曲)』などと勝手に呼んでいますが、とにかく夜に咲き、深夜に閉じる月草のイメージです。

開店から4年めにして、まだ2夜めとなるこの『夜月草』。個人的には仄かな期待と慄く冒険心と緊張感たっぷりで咲かせております。

 

さてこの『夜月草』、2点ほど普段(昼)の月草とは違った明確なコンセプト(のようなもの)があります。

ひとつには、私が選りすぐったお酒(メインはワインと清酒)を出すこと。スペシャリティコーヒー2種類と玄米茶もございます。通常営業時と違って清酒と玄米茶があるのは、倭(和)なメニューを入れたいのですよね。理由はうまく言えないのですが。なので「喫茶」を謳いながらもメニュー内容は若干「バル」寄りです。

もうひとつは(こちらがさらに重要なのですが)、

「3名様以上の入店をお断りさせて頂き、普段よりもさらに静かなお店を保たせて頂く」こと。

 

その理由をざっくり述べると、「クラシックとお酒を静かに楽しみたい、独りきりの方」をどうしても優先したいのです。僕自身が1人の客としてそんな店を強く欲してきたということもあって(その意味では、『夜月草』は僕の理想的名曲喫茶——クラシック音楽のみが流れていて、深夜まで開いていて、おいしいワインと清酒とコーヒーがあって、他のお客さんの喋り声がしない——とも言えます)。

それに関して「お酒を出すのに会話不可か……」といった懸念や、「団体さんを入れないのは売り上げ的に……」というような批判も多少頂いたのですが、僕としては、この店においては常に「お喋りしたい方々」よりも「黙って(音楽を聴いて)いたい方」の味方でありたい。そうした場を望む方々のために『夜月草』を開けるのだから、というようなささやかな気概と生意気な保留心にたぎっております。

 

というのも、団体の方のお店、あるいは喋りながらお酒を飲みたい方のためのお店は探せば(あるいは探さなくても)あるでしょうが、クラシックを聴きながら1人静かにお酒を楽しみたい方のための店はそう簡単には見つからないはずだから。

知らずにご来店くださったお客様に上記コンセプトを理解して頂いたり、喋っている方に注意させて頂いたり、なるべく音を立てないようにメニューの支度をすることは、多少神経を使いますが、「自分が行きたい店を自分で実現している」という感じですので「矛盾がない」と言う意味では気分的におおいに楽です。普段の月草では営業上、あれこれ折合いしないといけないところはどうしてもあるので。

……ですが、前回はこのような希有な場所をたとえ1日限りでも設け、維持することは思っていたよりもずっと大変なのだと痛感したりもしました。

 

しかし今回は先月よりも多くのお客さん(ほとんどがお1人様でした)がいらしてくださって、さらに雰囲気も僕が望んでいた通り、いや、それ以上に静かで親密で蠱惑的な晩となり、店主的に凄く嬉しかったです。これならきっとまた次も開けられる……というような微かな手応えを得ました。

 

余談ですが、開いてるのが夜〜深夜なのでおかけするクラシック音楽も意志的に、無意識的に昼とは変わってくるようです。たとえば、この日はなんとなくシューマン楽曲が相応しいような気がして、リクエスト(バッハのヴァイオリン協奏曲)が入るまではずっとシューマンの『夜想曲集』『3つのロマンス』(ピアノはおもいにイエルク・デムス)をかけ続けていました。ロベルト・シューマンという音楽家の凄さに打ちのめされた晩でした。

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普段の『月草』はもちろん、この『夜月草』も数多の偉大なクラシック音楽と、静けさを望む(あるいはご理解ある)お客様方によって生み出された、本当にかけがえのない場所であると(手前ながら)思っていて。

いらしてくださった皆さん、いらしてくださらなくても無言で応援してくださる皆さん、本当にありがとうございます。次回の『夜月草』開催日(?)はなるべく早めにお知らせさせて頂きますので、またどうぞ宜しくお願いします。

月草店主 イツキ