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水と今

かくして君は待つ、ある人が現れるのを。君の命をとめどなく膨らませにやって来るのを。(リルケ)

毎晩酒を呑むオレが二日酔いにならない秘訣教えたる

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あけましておめっとさん。さっそくだが、こないだな、オレの質問サイトask.fmhttps://ask.fm/lmflowersに以下のような質問を頂いた。

酒は人類の友! しかしついつい仲良くしすぎて(飲み過ぎて)しまい、 翌日、どんより後悔!してしまいガチで悩んでいます。上手な付き合い方、秘訣を教えてください。

これは酒呑み連中にとってはいつだって切実な問題だな、と思ったね。そしてオレが長いこと追求してきたテーマでもある。それで、頑張って回答をぱたぱた書いてたらよ、いつのまにかぎょうさん長くなっちまったんで、この場をかりてお答えさせてもらおうってわけだ。

くだんのお悩みについてはよ、自他ともに認める酒好きであるオレもそりゃあ長えこと悩んできたしな、対策も練ったし、言ってみりゃトライ&エラーを繰り返してきた。それで世の多くの呑み助諸氏――ここは可愛くそう呼んでおきましょうぜ――も多かれ少なかれ、長え歴史の中でこの手の悩みと向き合い、敗れてきたはずだ。

そこで酔い、もとい良い機会だからな、オレなりの「酒との付き合い方」ちゅうもんを一気呵成に記してやろうと思ってな。何せおよそ20年近く「呑み助」として歩んで来たオレの長年のノウハウを一挙に列挙するからよ、いささか長回答になっちまうかもしれねえが、最後まで付き合ってくれ。損はさせねえから。ニャーオ。ニャーオ。ニャーオ。しつこい? じゃあ行くぜ。

 

1 酒子に対して節度を保つ意思を持て!

あんたが普段、どの程度お酒をきこしめしていらっしゃるのかオレにゃあさっぱり判らねえけどな、まずオレに関して言えば、ほぼ毎日呑んでる。わかるか? 毎日よ。だからな、「翌日にどんより後悔するほど」呑んじまうと、「翌日は呑めず」ちゅう事態を招いちまうわけだ。厳格な酒徒たるオレにとって、こいつはちょっとぞっとしねえ。

まずあんたと酒子ちゃんの「目的」をしっかと見定めることが大切だとオレは思う。もし酒子ちゃんと週末だけの深い付き合いをしてえなら、恥も外聞も気にせずべったり一緒にいて、周りの連中が引くくらい仲良くしてりゃあいい。翌日ベッドから起き上がれなくなるくらいイチャイチャすりゃあいい。

かく言うオレにもそんなような時代があった。ただ、それは酒子ちゃんとウィークエンド・ラバーだった頃の話な。酒子ちゃんと毎日上手に付きあうんだったら、「どんだけ愛しあっても、最後の一線はけっして崩さねえ」。そんなジェントルなスタンスが求められるわけよ。似合わねえ? そうだよな。でも、これも酒子ちゃんをこよなく愛してやまねえからこそってもんよ。

だからな、あんたにゃ、翌日も新鮮な気持ちで愛しあえるギリギリの交わりっつーか、アッチッチ!の限界で自分らにストップ!をかける客観性ちゅうの? 節度ちゅうの? そういうのが必要よ。あんたもご存知の通り、酒子ちゃんはいつだって付き合い始めの恋人なみにアツアツで依存性高えやつだからな、そりゃあ、それなりの意思の力が必要だろう。けどな、とにかく酒子ちゃんといちゃついてる時、常にあんたが念頭に置くべきことは「明日もこいつと新鮮な気持ちで愛し合えるか?」だぜ。忘れんな。

 

2 酒量を見切れ!

てめえの酒量リミットをおおまかにでも見定めておくことはめっちゃ大事だ。オレだってそれほど酒に強いわけじゃねえが――ここんとこは「3杯」がひとつの目安になっちょん。

こいつぁつまり、ビールなら小瓶1本(350ml)。日本酒なら徳利1本(180ml)。ワインならグラス1杯(180m)。おっと、ワインバーなんかでは1杯120mlが標準的らしいがな。まったくケチケチしてやがる。焼酎なら90ml、ウィスキーやウォッカならワンショット(45ml)を「1杯」ってことにしてな、「3杯」を1日に呑むリミットにしてるってことだ。いや、あくまで「おおまか」だからな、実際にゃあこれより下回ることも上回ることも時々あるけどよ(いや、たいてい上回っているか……)。

もちろん、「適切な酒量」ちゅうのはその日のあんたの健康状態によっても変わってくるからな――オレは専門医じゃねえんだからそこまで言わせんなよ――そのあたりはてめえの身体と相談しながらきこしめしてくれい。1週間程度、てめえの呑んだ酒の量と翌朝の体調のメモなんかつけてみると判りやすいかもしれん。オレはマメじゃねえから、そんなこたぁしねえけどな。

 

3 呑む時にこいつを心に留めておけ!(×5)

ただなあ、「おいおい、呑む時にいちいち酒の量を量ったり、自分を見張ってたらせっかくの酒がまずくならあ!」とあんただって思うよな。実はオレもそう思ってる。だから酒の量にそこまで厳密になんなくても翌日に酔いを持ち越さずに済むテクニックを5つばかり教えてやるから両耳の穴かっぽじってよく聞けよ。

其の1 水を傍らに置け!

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酒の合間合間で水を摂ることを心がける。よく聞く? だよな。でもな、わかっていながらなかなかできねえ。そだろ? でもな、日本酒だの蒸留酒だのをたっぷり呑む際はチェイサー(日本酒専門店では「和らぎ水」と言うそうです)必須だぜ。ためしに今日から1杯(1合)につき、コップ1杯(約120ml)の水を飲んでみい。

とはいえ、こいつもかっちり決める必要はねえ。酒席で、傍らにコップ1杯の水を常に置いておくことを意識するだけでも翌朝の目覚めがだいぶん変わってくるだろうよ。べつに水道水でもいいっちゃあいいけど、ミネラルウォーターやら浄水器を通したなるべく良い水だとなお効果が高いとオレは思うが錯覚かもしれねえ。まあ、とにかく酒を呑むならちょっとでいいから水も飲め。忘れんな。

 

其の2 「あて」を取れ!

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「あて」を取る。これも昔から推奨されてきた呑み方だ。しかしなあ……。

かねてより、酒呑みは呑む時はしっかり召し上がらないものと相場が決まってんだ。たしかにオレも究極的には「酒のみ」で頂くのがやっぱ本来的に感じる。それがもっとも美味しく呑めるっちゅう酒呑みはけっして少なくねえだろう。だがな、ポン酒なら冷奴か焼き味噌(旨い焼き味噌とポン酒の組み合わせはカクベツなんだよ)、ワインならオリーブかチーズ(旨いチーズとワインの組み合わせはカクベツなんだよ)ウィスキーにナッツかドライフルーツ(オレならプルーンか梅干しを所望する)くらいは率先して摂ってもらいてえ。もし家で呑んでて冷蔵庫空っぽなら、呑む前に茶碗1杯のコメ食っとくだけでも、身体に良いって聞くぜ。故・杉浦日向子女史もエッセイで呑む前の赤だしとおむすびを薦めてたから間違いねえ。

さて、こいつぁ余談だが――かつてのオレがすっげえ衝撃を受けたのは、早朝、まだ何も食ってねえ状態で果物を「あて」にして飲むワイン。これな。無論、オレら庶民にはそうそう簡単にできることじゃねえが、何といってもこの呑み方はワインと果物の味を30倍くらい引き立ててくれんだよ。たぶん起き抜けの舌が1日でもっとも敏感っちゅうこともあるんだろう。ワイン通の洒落たダチに教えてもらってよ、初めて試した時――たしかニュージーランド産のピノなんとかと林檎と白葡萄だったな――、あまりの美味しさに全身の肌が粟立った。あれは忘れられねえ。

 

其の3 「ながら飲み」するな! 

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これがオレが個人的にもっとも強調してえ方策かもしれねえ。ここでいう「ながら」ってのは、飲み食い以外の行為よ。つまり、テレビやらDVDやら見たり、本を開いたり、スマホいじったり、誰かとくっちゃべることも含むからな。

あんたのお家、それか居酒屋のカウンターで黙って、酒(とあて)のみと対峙して呑め。そやって呑んでりゃあ、どんくらいの量の酒がどんなふうにてめえに働きかけてんのか、また、どこで許容量を超えちまったのか、バッチリ掴めるから。

オレは時おり、目え瞑って耳栓してな、座禅を組むんよ。そんで傍らに酒を置いて呑む――そういう時ぁたいていポン酒だな。一番サマになるからよ――そういうことをやる。酒とてめえ以外のイッサイガッサイを遮断した状態で呑んでると(たいてい2、3合で眠くなって横になっちまうけどな)、次の日に二日酔いになることはだいぶん少なくなるように思うぜ。

ただ誤解すんなよ、オレだって酒を飲みながら誰かと話したりよ、音楽聴くのも嫌いじゃねえっちゅうか大好きだからな、いつだってそうやってストイックに酒を呑んでるわけじゃねえ。オレの場合、心を許した(あるいは許せそうな)相手との酒で二日酔いになるのは全然かまわねえ。だがな、気の合わない相手とどうにかこうにかやりすごすために無理に酒食らった翌日はな、きまってイヤーな二日酔いになる。こんなことだったら、1人で座禅組んで呑んでりゃよかった……ってよく思う。酒の量とは無関係に「居心地良い状態で呑む」ってのは呑み助にとってもっとも大切なんだよ。これは胸に刻み込んでおけ。

 

コツ其の4 チャンポンするな!

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「チャンポン(判ると思うが、違う種類の酒をいちどきに呑むことな。ワイン飲んだ後、テキーラ食らって、チェイサーにコロナ飲んでジントニック飲んで……みたいなやつ)すると二日酔いになりやすい」っつう俗説がまかり通ってるが、信憑性あると思うか?  

オレの長年の経験から言うと、めっちゃあると思うね。科学的コンキョは寡聞にしてよく知らねえが、チャンポン呑みは全くお薦めできねえ。たしかに酷い二日酔いを招いてきたし、酔いが良い心地じゃねえのよ。なんでかって?

以下、オレの仮説っちゅうか思いこみなんで適当に流してくれ。

「酒」っちゅうのは「酒」っちゅう名称でひと括りにされてるが、同じ「酒」でも原材料によって、造り方によって、産地によって、酒精の質なるもんがまったく異なるんよ。たとえばな、アルコール14℃のシャルドネの白ワインと、同じくアルコール14℃の山田錦で造った純米酒じゃあ、同じ「アルコール」で同じ度数でも、体感じゃあまったく別もんに感じる。もちろんテキーラとウィスキーも違えし、ラムとビールも然り。それぞれの原料が、産地が、造り方(造り手)が、それぞれ全く別の酒精を生み出す。これって考えてみりゃ当たり前だよな。イヌだって同じ形してるけど、イヌそれぞれ全然まったく違うだろ。

でな、異なった酒精は体内で喧嘩する。たとえば、ビールの酒精とテキーラの酒精と日本酒の酒精とジンの酒精が戦ったらどうなるよ? そりゃあもぉ、てんやわんやの大戦場、翌日は二日酔いっちゅう名の凄惨たる跡地ですわ。

それを知ってるからか? アイルランドの生粋の呑み助たちわな、週末にパブで過ごす時、最初から最後まで同じ酒を飲む方が多いんだってよ。1杯目にギネスを飲んだららその晩はひたすらギネス。アイリッシュ・ウィスキーで始めたら、水で割ったり、氷を加えることはあっても、ラムやテキーラに切り替えることはしねえ。たぶん酒精に喧嘩されたくないからだろう。

まあ、そこまでは極端としてもな、全然別種の酒を混ぜ合わせて作る「カクテル」ちゅう飲みもの……あれは良くねえわ。うら若き男女が速やかに効率良く酔っぱらうためには最適かもしれねえが、翌朝の安全は全く保証しねえからくれぐれも用心せい。ちなみにオレは自慢じゃねえが、バーでもジントニックとかハイボールみたいな単一酒で作ったカクテル以外は呑まねえようにしてる。だいいち、あれこれ混ぜたもんはそれほど旨くねえし、これまでさんざん痛い目に合ってきたからよ。

繰り返しになるが、長く、二日酔いにならないようにして呑み続けたいなら、同じ種の酒をじっくり呑め。せいぜい冷たいビールを1杯飲んだら、後はポン酒ならポン酒、葡萄酒なら葡萄酒、芋焼酎なら芋焼酎だけを浮気せずに呑め。飽きたらその日は杯を置け。わかったか。

 

其の5 身体に訊け!

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オレぁ葡萄酒とポン酒が大好きなんだが、スペインのテンプラリーニョだったかニーリョだったか、あとカヴェルネ・ソーヴィニヨンちゅう品種がどしても身体に合わなくてな、2杯も食らうとヘロヘロになっちまう(カクテル同様、手っ取り早く酔うには良いだろうが)。他方(って言葉をいっぺん使ってみたかったんよ)、ボジョレーヌーボーに使われるガメイやピノなんちゃらだとな、てめえ1人でボトル開けてもまだ呑める感じがするんよ。ポン酒の場合だと、兵庫産の「山田錦」ちゅう米で造った純米酒が身体に滲みる感じがすんだな。

これはどういうことなのか? 以下、仮説じゃねえ。実感な。

酒にはな、飲み手との「相性」なるもんが確実に存在する。もちろん、その相性は人それぞれ違え。じゃあどうやって相性を見極めれば良いのか? 教えてやる。「人」と同じよ。呑んでて、あんたの身体にすぅっと滲み渡るような、どっしり落ち着くような、きゃっきゃ喜んでいるような感じのする酒、それがあんたに合う酒だ。逆に相性が良くなきゃ、口に入れると違和感っちゅうの? ヘンな感じの後、しばらくして身体が拒否反応(とまではいかなくてもある種の不快だな)を示すだろうよ。相性の良い酒でありゃあ、いつまでだって呑んでいることができる、いや、実際にはできねえんだが、できるような感じがするだろうよ。

まとめるとな、この世にそりゃもぉたくさんさんさん存在する酒ん中から手前の心と身体にぴたりと合う酒を見つけることができりゃあ、そいつを自宅で呑む、またはそいつを出してくれる、ありがてえ店を見つけることができりゃあ、結果、二日酔いの頻度を減らすことができるだろう。そのためにも数多くのポン酒を、色んな品種の葡萄酒を試してみようぜ。高価な酒を買う必要はまったくねえ。たしかにワインの場合、値段と品質はかなり比例するらしいが、高えからと言って、あんたとの相性が良いとは限らねえからな。オレだって高級ワインでひでえ二日酔いになって、旨安ワインで翌朝すっきりちゅうことはぎょうさんある。

あと、どっかの店で飲む場合、めんこい店員ちゃんだのソムリエさんだのに薦められたからって、合わねえ酒を無理に飲む必要はないからな。これも勉強と思ってだな、「すみません、ちょっと口に合いませんでした」とか何とか言って思いきり残しちまえばいい。店の人だってその方が勉強になるんよ。あんたに合う酒はだな、まるで一目ぼれのように(一目惚れ、したことあるよな?)「これだ!」って判るはずだ。この人生は、あんたの酒子と巡り合うための旅だと思って飲食店を巡って、酒屋で買って、自宅でも店でも、呑んだ酒とてめえの相性を毎回つぶさに観察してみろ。自分を伸二郎、じゃねえ、信じろ。

 

まとめさせろ!

さてさて、今回はやったら長くなっちまったな。いったいどんくらい書いたんだ……6200字か。こりゃ誰も最後まで読まなかっただろうな。まあ、酒呑みのオレにとっては普遍的かつ切実なテーマだったから、しゃあねえ。

そんで、こんだけ偉そうなことをたっぷり記しときながら、オレとしたことが、今夜はいささか呑みすぎちまったらしい……明日は久しぶりの二日酔いだろうよ。これもまあ、しゃあねえ。

さて、2016年はあんたとオレが翌日の二日酔いとはなるべく無縁の酒徒人生を送れますように! 心からそう祈ってる。オレぁ酔っ払いついでに台所でもう1杯呑んでくるからな。あばよっと。