水と今

かくして君は待つ、ある人が現れるのを。君の命をとめどなく膨らませにやって来るのを。(リルケ)

2015年のマイベスト・ムービー10本(もとい5本)

当ブログの連続日誌、8日目から9日めにかけて5日間も空いちまいましたが、年内も残るところあと2日なので、別テーマでいきます。

本日はほぼ毎年恒例となっている、「2015年のマイベスト・ムービー10本」!……と、ぶちあげたいところですが、今年は様々な理由が複雑に絡み合い、映画は例年になく数を観ていないので、10本選出はいささか難しそう。なので、5本に絞って発表したいと思います。(ぱんぱかぱーん ぱんぱんぱんぱんぱかぱーん←20世紀フォックスのマーチ)

特別賞

マジック・イン・ムーンライト

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5位

インサイド・ヘッド

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僕は正直、ピクサー作品に対し、そこまで騒ぐほどのものじゃないよな……とシニカルな視線を送り続けてきた者ですが(CG画に馴染めないのも大きい)、この映画には開始後すぐに惹きつけられ、興奮し、感動さえしました。

「感情」という、あまりに漠としたテーマを個性的なヴィジュアルキャラクターとして描き出し、彼らが旅するサイケデリック、かつ広大な世界を日常的(現実)世界と鮮やかに対比・影響させ、ピクサー的古典的ハラ・ドキを交えながら進んでいくというストーリー展開は、目をみはるものがあります。

しかし、いやいやいや、ヒトの感情はここまで単純じゃないだろ!と訝しがる自分も確かにいたのですが、観ているうちに「いや、感情ってのはこのくらいシンプルな存在に捉えていた方が良いのかも……と考える自分が出現しました。例えばこの映画でも、ヨロコビ(というキャラクター)が終盤に落下した「深層心理(無意識)es」 という場所は、彼らにもけっして計り知れぬ深さと、未明(不明)な地として描かれています。

この映画は「ヒトの性格はたった5つの感情から成っている。だから感情が変わればヒトも変わる」と謳っているわけではありません。そうではなくて、「喜怒哀楽とは、たしかに自分に働きかけてくる個別キャラクター(のようなもの)である。それでも感情たちの奴隷とならずに、自らが感情を主体的に、能動的に動かしてあげることができれば、あなたは変わることができる」というポジティブなメッセージを奏でているように思います。

ところでこの映画、原題は『Inside Out(インサイド・アウト)』なんです。こちらの方が断然格好良く、主題を絶妙に表しているけれど、それをわかったうえで『インサイド・ヘッド』に変えた担当者はあざといというか、致し方ないというか……。

 

4位

I LOVE スヌーピー

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CGアニメ作品が続きます。この映画に関しては前回のエントリーでも触れているので(前日の記事を参照)、簡潔に。

この作品は「PENUTS」(端的に言うと、スヌーピーやチャーリーブラウンが存在している世界)は作者であるシュルツが亡くなろうと、時代が変わろうと、コミックがテレビアニメになろうと、テレビゲームになろうと、ノベルティグッズになろうと、CGになろうと、絶対に永久不滅(確実にそこに宿る)のものである。製作者はそんな「PENUTS FOREVER!」を全世界に向かって高らかに宣言し、それをスクリーン上で証明してみせた。といったところだろうか。

原作(コミック)に幼少時より親しんできた者としては、CGキャラクターの造形には唸らされたものの(驚くほど違和感がない)、スヌーピーがワンワン吠えるだけ(原作のように台詞が翻訳されない)という点に関しては往年のアニメシリーズ同様、根本的な物足りなさは禁じ得ないのだが、PENUTSという世界を生み出したシュルツの、そしてアメリカという国がPENUTSにもっている敬意の深さを改めて思い知らされることとなった。この映画は毎年、アメリカの大晦日に無料上映するべきだろう。PENUTSは国宝そのものなんだから。そして、僕も君も I LOVE スヌーピー。これまでも、これからも。

 

3位

ど根性ガエル(TBSドラマ)

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『ど根性ガエル』をこのランキングに入れるべきか否か、ずいぶんと迷いました。しかし、やはり入れることにします。この作品は今年僕が唯一全話観たテレビドラマなのですが、観賞中の、または観賞後の感動は映画作品のそれと何ら変わりなかったから。や、「変わりなかった」というのは適切ではないな。

たとえば、もしこの作品が2時間強の「劇場版」だったら、この作品をこのランキングに入れようとは思わなかったはずです。つまり、この作品は毎週1話完結/全10話というテレビドラマのフォーマットにぴったり合っていた、それでしか得られないsomethingを鑑賞者に与える映画的なドラマだった。そう言うことができそうです。全話観賞後、私は以下のようにツイートしました。

 

今思い起こしてみても、この感想は全く揺らいでいません。さらに言えば、『その後の「ど根性ガエル」』という容れ物を使って、これほど普遍的かつ現代的なテーマを投げ入れ、それをしっかりと収束させて脚本家の岡田惠和さん(大御所シナリオライター)の力量は本当に凄いと思う。日本のドラマはこれまでほとんど観ないできたけど、この人の過去脚本作品は追ってみたい。

※『ど根性ガエル』は動画配信サイト『HULU』に加入して無料期間中に全10話観てから解約すれば、完全無料(しかもHD画像)で観れますので、ぜひっ。 

 

2位

インヒアレント・ヴァイス

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観賞後のツイート抜粋。

(ツイートを抜粋すると、他に記す気がなくなってしまうので、今後は控えよう……)

ポール・トーマス・アンダーソン(以下PTA)は前作『マスター』で完全に巨匠的存在になってしまったことに自ら危機を感じたのかもしれない。今作では原作にピンチョンのメタ・ハードボイルド小説作品を扱うことで、『マスター』よりもニッチでオフザケで、PTAらしさの薄まった作品を敢えて撮ろうと思ったのではなかろうか。だが結果として、やっぱりPTAらしい、巨匠的作品になってしまうという……。だが、ホアキン・フェニックス主演という時点で、この作品はこのような傑作となることを義務(約束)づけられていたようにも思う。そして、この作品にはフィリップ・シーモア・ホフマンという偉大な俳優の死が通奏低音的に流れている。いや、彼の死をも呑み込むような巨大な包容力を宿していると言うべきか。穏やかに、悲しげに揺れ続ける広大な海のような作品だと思った。

 

1位

バードマン(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

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2015年に観賞した映画の中でもっとも心に滲みた、という価値基準から選べばぶっちりぎりで『インヒアレント・ヴァイス』なのですが……インパクト(衝撃度)で選出すると、これが1番でした。監督も俳優もさほど好みではない、というよりも、どちらか言えば苦手だったにもかかわらず、年間1位にしようと思った作品はここ数年ではデヴィッド・リンチ『インランド・エンパイア』以来かもしれません。シームレス(風)に流れるカメラ、不穏に叩かれ続ける通奏低音ドラム、いちいち苦笑したくなるような役者の大袈裟な演技とスタイリッシュな画が一発芸的瞬発力と破壊力を放ち、ラストには清々しいまでの解放感で見事に締めくくっていました。凄い。

 

以上、5本の選出でした。とりいそぎにてっ(お得意の〆)。