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水と今

かくして君は待つ、ある人が現れるのを。君の命をとめどなく膨らませにやって来るのを。(リルケ)

限りなく12月めいた10日間の不思議(2日め)

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じつのところ、今日はけっこう疲れている。このストローク浅いキーボードをぱたぱたぱたぱた……叩くのもままならない。それというのも、昨日、ほとんど眠れなかったから。

どうして眠れなかったのか? それというのも、どうやら、自宅で淹れて飲んだ泥水のように濃いコーヒーのカフェインが「てきめん」に効いてしまったらしいのだ。よおし、明日は早いぞ、眠ろう……そう思いながらベッドに横たわった時、天啓のようにはっきりわかった。


私 は 眠 れ な い

 

カフェインによる不眠状態というのはわかる人にはわかると思うが、けっこう強烈である。横になって目を閉じてみても、無心になってみても、羊の数を数えてみても、ああ、こりゃ何をどうやっても寝れっこない! そんな確信にみちた体感がふつふつと覆いかぶさっている。まるで2月のロンドンの灰色の雲のように。こうなったら春がやって来て、灰色の重たい雲が何処か遠くへ流れ去り、空が白むまで起きているよりあるまい。

 

……(2時間経過)

………(3時間経過)ここで、クラシック音楽(ベートーヴェン「春の歌」)を小音でかけてみる。しかし、ほとんど効果はない。

…………(4時間経過)
そして、窓の外が少しずつ白んでくる。国立駅北口に出来たばかりの『富士そば』では、こんな時間でも誰かがコロッケそばを美味しそうにすすっていたりするんだろうか? と思う。ねえねえ、富士そばの蕎麦は蕎麦粉たった4割なんだってよ、と虚空に向かって呟いてみたりする(もちろん、効果はない)。

……………(カフェインが切れ始め、ようやく途切れ途切れの夢を見た。大分に行って古い友人に会ったり、弦楽器で襲いかかってくる幽霊と対決する夢だった)

 

時計を見るといつのまにか午前8時。起きる時間だ。「起きる」というより、横になっていた状態から這い上がる、という感じ。軽い昼寝を挟んだ「徹夜」という感じ。学生の時分は、こういうのはかえってテンションを高める、くらいだったが、この歳になると「眠り損なった」いう感しかない。

しかし寝ていなくとも、私は朝食をたくさん食べる主義である。均せばかなり小食な方だと思うが(酒をたくさん呑むので)、朝食だけは、いつだってたっぷり摂る。前日に母が作ってくれていた美味しいポトフ、隣町のお気に入りパン屋さんのシナモンロール、四つ葉のカマンベールチーズ。いつもの『木のひげ』カンパーニュも食べたかったが、切れていたので、残りは店で食べることにしようと思い、早々に家を出た。

親しくしている北口のコーヒー焙煎店で注文していたコーヒー(ケニア)を受け取り、「ど生鮮」を謳う巨大スーパーで箒と塵取りを買い、店の掃除と支度にかかる。掃除開始から1時間後、さっそくご夫婦らしきお客さんが入り口に現る。「まだ開いてませんよね?」

開店時間前だが、わざわざいらしてくれたお客さんを帰すわけにはいかない。掃除も支度も8割済んでいたので、中に入って待っててもらう。

さて、そこからは、怒濤の、というのはいささか大袈裟だが、名曲喫茶時間である。言わば「面舵いっぱい」である。ランチタイムはカレーがたくさん出たし、Kさんによるクラシックギター生演奏時間はほとんど満席になったし、2種類のコーヒーをかわるがわる淹れ続けないといけない。そうしてクラシックギター演奏が終わったら、当店でもっとも忙しい、私がもっとも本領を発揮する(と言うべきか)「夕方時間」。この時間は常連のお客さんとリクエストがもっとも多い。

今日は所沢からわざわざいらしてくださった親子がベートーヴェン「第九」をリクエストしてくださった。だが、ボックスセットの何処を探しても第1楽章が見当たらない。間違えて3楽章からかけたり、「田園」をかけてダメ出しを頂いたりと、徹夜状態ならではの不始末。そこで、(きっと僕よりも詳しいであろう)件のお客様に棚から別の盤を探してもらう、という暴挙に出た。

そして、おっと、あっさり見つけ出してくださった。オットー・クレンペラー指揮の第九。

ベートーヴェン:交響曲第9番

ベートーヴェン:交響曲第9番

  • アーティスト: クレンペラー(オットー),ホッター(ハンス),クメント(ワルデマール),レーブベリ(オーセ・ノルドモ),ルートヴィッヒ(クリスタ),フィルハーモニア合唱団,ベートーヴェン,フィルハーモニア管弦楽団
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 2004/06/23
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これはたぶん数年ぶりに聴いたのだが(所有していたことを忘れていた)、実に壮大で、優しく、濃やかな第九であった。今日は閉店時間までお客さんが途切れず、腰を下ろす時間は5分しかなかったが、Kさんのクラシックギターとオットー・クレンペラーの『第九』で、僕の睡眠不足はすっかり吹き飛んでいたように思う。

 

店仕事の後、母親と待ち合わせてお気に入りのお蕎麦屋さんに行こうとしたのだが、決して広くはないその店を酔った中年男性たちが占拠している、という報告を受けたので急いで別の店に赴き、「花蕎麦」を食べて帰宅した。

花蕎麦というのは、「たぬきそば」に近い。おおむね、そう思ってもらっていいと思う。揚げ玉とほうれん草と葱とかまぼこが入っているオーソドックスな蕎麦である。しかし、本当は今日は野菜の天麩羅と花巻そば(海苔と山葵で閉じた温かいそば)が食べたかった。だが、それはまたの機会に譲ろう。その時は、名うての江戸研究家であり、江戸漫画家であり、酒呑みであり、愛しの杉浦日向子さんのことを思い出しながら花巻蕎麦をすすろう。もちろん、ビールの小瓶と冷やの御酒も忘れちゃいけない。そうだよね? その通り!

もっとソバ屋で憩う―きっと満足123店 (新潮文庫)

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さて、明日は、名曲喫茶vs生演奏バトル(闘ってるわけではないですが)第2弾「クラリネット・デュオ・コンサート」が控えている。これは何しろ初めてのことなので、勝手がまるでわからない。どんなコンサートになるのか、お客さんがいらしてくれるのか、まるきり予想つかない(セットリストは送ってもらったが、半分以上知らない曲だった)。そも、どういう経緯でこのコンサートを行うことになったのかもあまりよく憶えていない。しかし、きっとエキサイティングな時間になるだろう。今からとてもワクワクしています。

さて、自宅で燗した御酒3合の酔いが程好く回ってきたので、今日はよく眠れそう。では、また明日。おやすみりん(みりんに似た風味の御酒を呑みながら)。