水と今

かくして君は待つ、ある人が現れるのを。君の命をとめどなく膨らませにやって来るのを。(リルケ)

カフェイン不眠、シューベルト覚醒、プレゼント小皿

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真夜中、墨のように濃いコーヒーを小さなカップでちびちび飲むのが好きで。でも、この日はそれをやったら目がぱっちり冴え、心臓どきどきして、朝が来るまでまるで寝つけない、、という辛い事態になってしまった。もぉどうしたって眠れそうもない……。幻聴、幻視、幻思が私を覆う。夜の帳はぴったりと下ろされたまま。

 それで、あきらめて、シューベルトのCDを小さな音で何度も何度もかけて、空が白むまでじいっと耳を傾けていました。ピアノソナタ20番、弾き手はアンドレアス・シュタイアー。今年、もっとも聴いているソナタと思われます。数あるピアノソナタの中でも、この20番は僕にとって、かなりとくべつな効き方をします。あるいは、とくべつな聴き方をすることを促してきます。そして、聴いていると否応なしに心にするする入ってくる。どんな風にするすると入ってきて、どんな風に強く心を揺さぶるのか? それについて記すには、まだ咀嚼が足りません。さらにもう少し時間が必要ぽい。あるいは、これは説明不可能の領域に属している曲なのかも知れない。とにかく、まるで、最初っからこの曲は未生の自分の中に眠っていて、地球時間にして30年くらい家を空けていたけど、久方ぶりに戻ってきたら、家の中の様子も雰囲気も迎えてくれる家族もまるきり変わっていないから、目をつむったままでも敷居の場所から畳のにおい、台所から漂ってくる湯気までよくわかってる——そんなような曲なのです。このピアノソナタのおかげで、数時間横になっているだけでだいぶん気力体力をリカバーすることができました。

そのようなシューベルトが効き始める昼まで眠れなかったため、親しき人とのお祝い(しつこいようですが、私の誕生日の)食事会の時間をだいぶん遅らせてもらいました。吉祥寺の某和食系レストラン(若い女性に好まれそうなヘルシーでお洒落な店)で、美味しい夕食をたっぷりご馳走してもらいました(Sさん、ありがとう!)。

このお店、かなりお米にこだわった店でして、何と釜炊きのお米だけで3種類あるのです。せっかくだからと2種類頼んで食べ比べてみたら、たしかにずいぶん味が違っていました。ブレンド米のほうはいかにも複雑妙味で、あたかも玄米のような野性味。シングルオリジン(コーヒー豆みたいですが)の米(名称忘却)は、とても直截的で、噛みしめるほどに硬く、澄んだ味がしました。味噌味ラタトュイユやカジキマグロや里芋コロッケともに頂きましたが、やはりお米には和食っぽいのがよう合います。

冒頭の写真は、親しき人から頂いた誕生日プレゼント——海のような色した小皿です。私のコンパクトカメラではその質感をしっかり撮りきれていませんが、色合いたいへん涼しげで、手触りのざらついた感じが心地よく、じっと眺めていたいようなお皿です。今朝、林檎タルト(母作製)を載せて頂いたら、まるで海沿いの潮風を含んだような味がしました。